眠り続ける君へ送る6つの言葉 05
どうもです。居候のカムロでございます。
あと数時間で家主様がご帰還なされます。
ということで、眠り姫シリーズのいつつめです。
ええ、今回は賢木先生でございます。
05 おまえはもう、ひとりじゃない
学生時代、レベル6の接触感応者である俺は、流れ込んでくる『心』に怯え、世界を嫌っていた。
まあ、当然だろうな。
十代の多感な時期に他人の愚痴やら、悪口やら、悪意やら、そんなものにさらされ続けたら、どんな奴でもおかしくなっしまうって。
変に強がっちまったから、収拾つかなくなってよ、それで周囲のノーマルに当り散らした。
そんな時だ。
俺の前にバカが現れた。
何がバカって、わざと殴られて、殴られることで直接思念を叩き込んできたんだぜ。
まあ、口で言うよりこっちの方が嘘つけないから『真実』だって伝わるけどよ。
どう見てもお坊ちゃんな天才様が、体張って俺に説教垂れたのが信じられなくて、完全に毒気を抜かれちまったわけ。その後は殴られて気絶した皆本を介抱して……それから何をするにしてもツルむようになった。
医者と研究者。
軟派と硬派。
エスパーとノーマル。
勉強も遊び方も立場もまったく違うけど、それが興味の対象となったのか、気づけばいい友人になっていた。
初めてできたノーマルの友人。
あの事件までは、そう思っていた。
立ち寄ったクラブで起きたエスパー同士の喧嘩。
些細なことから始まったそれは、ノーマルが持ち出した銃によって最悪の展開へと発展した。
飛び交う怒号と悲鳴。
その中で硬直したまま動かない皆本に触れたとたん、ソレは流れ込んできた。
紅、緋、赤
一色に染め上げられた世界で、ひとりの少年が血まみれになった誰かを抱いて立ち尽くしている。
そんな、胸を締め付けられる光景。
ああ、コイツはまだ少年のまま眠っているのだ。
たったひとりで――
独りになってしまった世界で、コイツは眠り続けている。
俺の力でも届かない奥底で、コイツはまだひとりで眠り続けているのだ。
声が届かなくてもいい。
だけど、この想いだけは眠り続けるお前に伝えたかった。
おまえはもう、ひとりじゃない
END
賢木先生のターン終了です。
あと一人です。ここまでありがとうございました。
というか、本編何時になったら書くんだ自分。
2009年01月04日
氷雨カムロ 拝
スポンサーサイト