それでも君は彼なんだ(絶チル短編)
どうもです。
居候の氷雨カムロです。家主様がデュララにサーチ登録されたとのこと。喜ばしいことです。でもシズイザは書けないんで、絶チルです。(どんな言い訳?)
例の短編です。
兵→皆ちっくです。
残業三桁突破の中、携帯で投稿したのでレイアウトが変です。
よろしければどうぞ。
居候の氷雨カムロです。家主様がデュララにサーチ登録されたとのこと。喜ばしいことです。でもシズイザは書けないんで、絶チルです。(どんな言い訳?)
例の短編です。
兵→皆ちっくです。
残業三桁突破の中、携帯で投稿したのでレイアウトが変です。
よろしければどうぞ。
Prince of DARKNEESシリーズ その3
それでも君は彼なんだ
不意に襲って来た重圧は、女王のそれよりも強烈なものだった。
骨を持って行かれる寸前に、瞬間移動で逃げたものの、体にかかった負荷は簡単に回復しそうにない。
目測で超度は5いや、6か。
不意打ちにしろ、この僕に傷を負わせるなんてなかなかないことだよ。
残る痛みに顔をしかめつつ、地上からこちらを見上げる坊やを見下ろす。
「君は誰だい?外見はあの坊やだけど、ずいぶんと中身が違うね」
「そうかな。僕はあまり変わった認識はないんだけど」
両手を広げて肩を竦める仕草に、ある種の嫌悪を抱く。
少なくとも僕の前では、坊やにこんなに余裕はなかった。いつも警戒し、緊張しているのに、反抗的な眼差しが決して失われることはない。
何度も無力感を味わって地に這いつくばっても、何度でも僕の前に立ちふさがる。
それがまた、嗜虐心をくすぐって楽しいのに。
だからこんな余裕綽々な坊やは楽しくないし、こんな坊やは知らない。
「さっきから坊や坊やとうるさいぞ」
「…………僕の思考を読むのか?」
「読むというか、隠そうとしてないだろ。ロリコンジジイ」
…………。
泣かす。
このガキ絶対泣かす。
泣かして、上も下もぐちゃぐちゃにしてやろうか。
「あ、訂正する。変態ジジイ」
ぶちん。
容赦のない一言に頭の片隅で、物騒な音が聞こえた。
いくら穏やかな僕でも、ここまで言われてだまっていられわけがない。
「いい加減にしなよ。それとも、遊んでほしいのかい?」
「出来るのならどうぞ」
こちらの思考を読んだ上で、あくまで挑発するのか。
訂正。
やはり君は楽しい坊やだよ。
手の平に意識を集中させ、サイコネキスを発動させる。見えない圧力に貧弱な彼の体はいつものように地面に押し潰される……はずだった。
なるほどねぇ。いつになく強気なのは、このせいか。
確かに力は使っているのに、坊やに変化はない。まるで空気を相手にしているような感覚に、目を細める。
力が届く寸前に掻き消された……といった感じか。
こいつの力は能力への干渉。
女王のそれとは違う理論で、相手の力に作用するもの。
ならばこういう作用も理解できる。だがこれは……
「それが君の力ってことかい?」
問いに、坊やは淡く笑う。
「どんな力も波長がある。その波長と正反対の波長をぶつければ消滅するし、同じ波長を乗せれば増幅する。学校でならった波の理論と同じだよ。ちなみに、念動力の波長が一番単純だから、簡単に高超度の力を出せる」
御高説どーも。
なるほどね。それは女王の力より現実的で、厄介じゃないか。
確かに超能力は波長でわけられる。
坊やの研究もそれに近い事をしていた。
だが、現実は言うより単純ではない。
そんなことが簡単にできれば、とっくに超能力者の天下さ。
本当に神様は、とんでもない組み合わせの二物を一人の人間に与えたものだよ。
「で、君はだれだい」
もう一度、問う。
確かに待ち望んでいた眠り姫は目覚めた。けれどこれは本来の目覚めとは違う。
きっかけは足元で気絶した二人組。
原因は脳内の電気信号を乱されたこと。忘れられていた超能力回路が刺激され、他人格を確立し活動を再開した。
そういったところだろう。
「僕は僕……といっても納得しないんだよね」
「わかっているじゃないか」
そういう物分かりの良さは坊やより好きだよ。
さて、どうしようかねぇ。このまま連れて帰っても話がややこしくなりそうなだけなような気がする。
「僕じゃだめなのかい?」
不意に届いた問いに、不覚にも目を見張る。
まるで片思いの恋人に告白するような響きを持った声色に、どきりとした。
「だって僕は君が待ち望んでいた力を持っている。だったらそれでいいんじゃないのか?君が欲しいのは力だろ。なら僕が誰かというのは、二の次でもいいだろ」
坊やからの言葉は、驚くほど胸に響いた。
そうか。
そうなのか。
だから僕は目の前の坊やが好きになれないのか。
まさか坊やの言葉で自覚するとは思わなかったよ。
足元の彼を見下ろして、唇で弧を描く。
「確かにね。君の力は僕らが望んだ力だよ。だけど、君は僕の好みじゃないんだよね。だからさ………消えてくれるかい」
拒絶の言葉に、彼は肩をすくめた。
「残念………ほら、やっぱり必要だろ、光一」
最後は自分の中に語りかけるようにして、彼は目を閉じる。
そのまま崩れ落ちた坊やに、慌てて手を伸ばした。
何が起きたのかを探ってみれば、先程までの生意気な気配は消え、腕の中にいるのは何時もの坊やだった。
とりあえず安堵するが、だがどうして元に……?
ああ、そうか。
こちらに近づいてくる彼女の気配。
なるほど、王は二人もいらないということか。
彼の力の消滅は十年程前。
もっと正確に言えば、女王が生まれたその日。
二人も存在してはいけないわけだ。
だけど、あの様子からして彼はまだ消滅したわけじゃない。だったら手に入れてやろうじゃないか。
王も、女王も。
「これからが楽しみだよ、皆本くん」
眠る額に軽いキスを送る。反応が楽しめないのが名残惜しいが、そろそろこの舞台を女王に譲る時間だ。
軽く指を鳴らし、地面に伏せた二人をたたき起こす。
軽くヒュプノで二人の記憶を弄れば、世界は再び女王を中心に回りはじめた。
ほんとおもしろいよ。
早く、僕の元に落ちておいで、眠り姫。
終
ありがとうございました。
20100712 若干修正。
いい加減本編をUPしなきゃですが…がんばります。
それでも君は彼なんだ
不意に襲って来た重圧は、女王のそれよりも強烈なものだった。
骨を持って行かれる寸前に、瞬間移動で逃げたものの、体にかかった負荷は簡単に回復しそうにない。
目測で超度は5いや、6か。
不意打ちにしろ、この僕に傷を負わせるなんてなかなかないことだよ。
残る痛みに顔をしかめつつ、地上からこちらを見上げる坊やを見下ろす。
「君は誰だい?外見はあの坊やだけど、ずいぶんと中身が違うね」
「そうかな。僕はあまり変わった認識はないんだけど」
両手を広げて肩を竦める仕草に、ある種の嫌悪を抱く。
少なくとも僕の前では、坊やにこんなに余裕はなかった。いつも警戒し、緊張しているのに、反抗的な眼差しが決して失われることはない。
何度も無力感を味わって地に這いつくばっても、何度でも僕の前に立ちふさがる。
それがまた、嗜虐心をくすぐって楽しいのに。
だからこんな余裕綽々な坊やは楽しくないし、こんな坊やは知らない。
「さっきから坊や坊やとうるさいぞ」
「…………僕の思考を読むのか?」
「読むというか、隠そうとしてないだろ。ロリコンジジイ」
…………。
泣かす。
このガキ絶対泣かす。
泣かして、上も下もぐちゃぐちゃにしてやろうか。
「あ、訂正する。変態ジジイ」
ぶちん。
容赦のない一言に頭の片隅で、物騒な音が聞こえた。
いくら穏やかな僕でも、ここまで言われてだまっていられわけがない。
「いい加減にしなよ。それとも、遊んでほしいのかい?」
「出来るのならどうぞ」
こちらの思考を読んだ上で、あくまで挑発するのか。
訂正。
やはり君は楽しい坊やだよ。
手の平に意識を集中させ、サイコネキスを発動させる。見えない圧力に貧弱な彼の体はいつものように地面に押し潰される……はずだった。
なるほどねぇ。いつになく強気なのは、このせいか。
確かに力は使っているのに、坊やに変化はない。まるで空気を相手にしているような感覚に、目を細める。
力が届く寸前に掻き消された……といった感じか。
こいつの力は能力への干渉。
女王のそれとは違う理論で、相手の力に作用するもの。
ならばこういう作用も理解できる。だがこれは……
「それが君の力ってことかい?」
問いに、坊やは淡く笑う。
「どんな力も波長がある。その波長と正反対の波長をぶつければ消滅するし、同じ波長を乗せれば増幅する。学校でならった波の理論と同じだよ。ちなみに、念動力の波長が一番単純だから、簡単に高超度の力を出せる」
御高説どーも。
なるほどね。それは女王の力より現実的で、厄介じゃないか。
確かに超能力は波長でわけられる。
坊やの研究もそれに近い事をしていた。
だが、現実は言うより単純ではない。
そんなことが簡単にできれば、とっくに超能力者の天下さ。
本当に神様は、とんでもない組み合わせの二物を一人の人間に与えたものだよ。
「で、君はだれだい」
もう一度、問う。
確かに待ち望んでいた眠り姫は目覚めた。けれどこれは本来の目覚めとは違う。
きっかけは足元で気絶した二人組。
原因は脳内の電気信号を乱されたこと。忘れられていた超能力回路が刺激され、他人格を確立し活動を再開した。
そういったところだろう。
「僕は僕……といっても納得しないんだよね」
「わかっているじゃないか」
そういう物分かりの良さは坊やより好きだよ。
さて、どうしようかねぇ。このまま連れて帰っても話がややこしくなりそうなだけなような気がする。
「僕じゃだめなのかい?」
不意に届いた問いに、不覚にも目を見張る。
まるで片思いの恋人に告白するような響きを持った声色に、どきりとした。
「だって僕は君が待ち望んでいた力を持っている。だったらそれでいいんじゃないのか?君が欲しいのは力だろ。なら僕が誰かというのは、二の次でもいいだろ」
坊やからの言葉は、驚くほど胸に響いた。
そうか。
そうなのか。
だから僕は目の前の坊やが好きになれないのか。
まさか坊やの言葉で自覚するとは思わなかったよ。
足元の彼を見下ろして、唇で弧を描く。
「確かにね。君の力は僕らが望んだ力だよ。だけど、君は僕の好みじゃないんだよね。だからさ………消えてくれるかい」
拒絶の言葉に、彼は肩をすくめた。
「残念………ほら、やっぱり必要だろ、光一」
最後は自分の中に語りかけるようにして、彼は目を閉じる。
そのまま崩れ落ちた坊やに、慌てて手を伸ばした。
何が起きたのかを探ってみれば、先程までの生意気な気配は消え、腕の中にいるのは何時もの坊やだった。
とりあえず安堵するが、だがどうして元に……?
ああ、そうか。
こちらに近づいてくる彼女の気配。
なるほど、王は二人もいらないということか。
彼の力の消滅は十年程前。
もっと正確に言えば、女王が生まれたその日。
二人も存在してはいけないわけだ。
だけど、あの様子からして彼はまだ消滅したわけじゃない。だったら手に入れてやろうじゃないか。
王も、女王も。
「これからが楽しみだよ、皆本くん」
眠る額に軽いキスを送る。反応が楽しめないのが名残惜しいが、そろそろこの舞台を女王に譲る時間だ。
軽く指を鳴らし、地面に伏せた二人をたたき起こす。
軽くヒュプノで二人の記憶を弄れば、世界は再び女王を中心に回りはじめた。
ほんとおもしろいよ。
早く、僕の元に落ちておいで、眠り姫。
終
ありがとうございました。
20100712 若干修正。
いい加減本編をUPしなきゃですが…がんばります。
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