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遭遇02

どうもです。一年ぶりぐらいです。
居候の氷雨カムロです。
もう、こんな連載やってたなんて忘れられてると思いますが、自己満足のためにアップです。
場所を提供していただいた家主さまには感謝です。
あ、またカラオケつき合ってやってください(笑)
コメント頂いていたのに全然お返し出来ていなくて申し訳ありません。昨年4月に転職してからどたばたしてまして……ほんとすみません。そしてありがとうございます

では、続きどうぞ。
Sleping Beauty

遭遇02




 目を開くと、星空が見えた。


 あまりにも見事な星空に、思考が停止する。


 昔、小学校の校外学習で行ったプラネタリウムと同じ光景だが、明らかに違う存在感。


 





(ああ、そういやこんなきれいな星空、いつから見てないんだ?)



 
 精神感応者だからか『本物』には敏感らしい。
 本物の星空に、ついつい見惚れてしまう。


「ふーん、君はサイコメトラーなのか」


「ッ!?」


 聞き覚えのない声に、賢木は息を飲む。

 誰何の声を発するより先に、本能的に能力が四方へと拡散した。

 五感が情報を得る前に、能力が周囲の情報収集と解析を終了させる。

 今いる場所を確認して、賢木は慌てて身を起こした。



(ちょっとまて、なんでこんな荒野に……街から軽く100キロはあんぞ)


「おや、そんな一瞬でそこまでわかるなんて……結構じゃないか」

 満足そうに笑う声に、賢木はゆっくりと振り返る。
 視線の先にいたのは、学生服の青年だった。黒い詰襟の、日本ではごくごく一般的な学生の制服。地元なら街を歩けば数人は見かける。
 けれどここが異国だと話は別だ。
 異国の、しかもこんな街から離れた場所で偶然出会う確率は、ほぼ皆無に近い。
 それにもう一つ、己の力を誇示するつもりはないが、さきほどの読み取りで彼の存在は情報として入ってこなかった。

 彼の存在を己の能力が認識できなかったのだ。

 それだけで、彼への警戒は強くなる。


「あんた何者? これでも超度はわりかと高いんだ。その俺が認識できないってことは、かなりの能力者だろ」

「んー、一度あったことはあるんだけどねぇ」

「は?」

「おや、覚えていないのかい? まあ、君はまだ子どもだったし、別のことに夢中だったからねぇ」

 くすくすと肩を揺らせば、銀色の髪がさらさらと揺れる。青年を彩る銀と黒は、背にした夜空と同じ色。
 そして、その瞳は………


 ゾクッ


 深い深い、眼差し。

 見られていると認識した瞬間、見えない何かに抑えつけられた気がした。
 冷たいなにかを背筋に流されたような、嫌な感覚。
 ゆっくりと内側に広がる感情の名に、賢木は息を飲んだ。


(なんだよ、これ……)


 震える体を必死に抑えつけて、賢木は銀髪の青年を睨み返す。

 もう一度目が合えば、青年は少し驚いたように目を見開き、やがて嬉しそうに笑った。
   
「合格。うん、君なら大丈夫そうだね」

 何がと問いを発するより早く、腕の中に何かが現れる。

 それが親友だと気づくまで、数秒の間がかかった。

「皆本!?」

 慌てて能力を使い、怪我の有無を確認する。
 彼がただ眠っているだけだと理解して、安堵の息をつく。
 

「何をした」
「別になにも。ただすこし、深く眠ってもらっただけだよ。まだ目覚めるには、準備が整っていないからね」
「どういう意味だ」
「言葉のままだよ。僕らはパンドラ。パンドラの箱を開けるのが役目」

 青年が大仰に一礼をし、膝を折る。
 賢木の腕の中にいるにも関わらず、皆本の左手を取り、その甲に唇を押し付ける。
 目の前で見せつけられた行為に、胸の奥底から黒い感情があふれだす。
 こちらの視線を感じたのか、銀髪の青年が視線だけを上げた。

「おーこわいこわい。そんなに睨まないでくれよ。一応は面倒事から助けてやったんだぜ」

「? どういう意味だ」

「言葉のままさ。まあ、明日になればわかるだろうけど」


 名残惜しそうに皆本の手を放して、ゆっくりと空へと浮かぶ。


「安心しなよ。その時が来るまで僕らはまだ動かないからさ」

「…………動けないの間違いじゃねぇのかよ」

「あはは、痛いところをつくねぇ。じゃあ、そういうことにしておくよ」

 ひらりと手を振って、青年の姿は空にかき消えた。
 瞬間移動までするところを見ると、合成能力者のだろう。
 
 それもかなり超度は高い。
 
 あの眼差しにしても、学生が出来る目ではなった。

 もっと年を重ねた、人間の目。

 出来れば出会いたくない部類の人間。
 
 
 しかも、目的は――


 腕の中の皆本の肩を強く抱きしめる。



 彼はようやく出来た親友。


 失いたくなんてない。


 
 皆本のいない生活に―――一人ぼっちの生活になんてもう、戻れはしない。
  


 気づけばずいぶんと依存しているようだ。

 安らかに眠る皆本の顔を覗き込んで、賢木は苦笑する。


「つーか、ここからどうやって帰ればいいんだよ」





 頭上に広がる星空を見上げて、ぽつりとつぶやいた。





遭遇02

END




お付き合いありがとうございました。


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辻斬りマリィ&氷雨カムロ

Author:辻斬りマリィ&氷雨カムロ
Cordyceps(冬虫夏草)は、辻斬りマリィと氷雨カムロによる『絶対可憐チルドレン』と『喰霊』中心腐女子ブログサイトです。

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