SUNNY(絶チル小ネタ)
こんにちはこんばんは。
当ブログの白石稔担当(自称)辻斬りです。
や、絶チルも書きますんで・・・あの本当に勘弁してください。
と言うわけで久々に絶チルです。
好きなように書いたらわけのわからないほのぼのが生まれました。
皆本+賢木でほのぼのしてます。
続きに押し込めてありますのでどうぞ。
++++++++++++++++++++++++++++++
SUNNY
賢木修二は少しだけ困っていた。
「・・・あー」
手には学校から帰ってくるであろう三人娘への手土産と思って買って来たケーキ。
(以前ロールケーキに渋っていたと聞いたのでクリームとフルーツで豪勢に飾った物を選んで)
もう一方の手には、本日非番であるはずのこの部屋の主に渡してくれと、上から直々に頼まれたいくつかの資料が入るケース。
そして目の前には、日当たりの良い部屋にて布団を床に広げ、その上で力尽きたらしい部屋の主。
状況は自分の能力で読み取らなくても簡単に理解できた。
恐らく、今足元で幸せそうに眠っている男は、久し振りの非番で部屋中を徹底的に掃除しついでに天気がよかったので布団干しも決行、最後に洗濯物に幅を取られベランダに干せなかった布団をこの日当たりの良い床に敷いて日光だけでも当てようと考えそれを実行したところで疲労がピークに達し、柔らかく温かい布団にダイブする誘惑に勝てず現状に至るのだろう。
エプロンをつけたまま眼鏡もかけたまま、それどころか足にはスリッパまで律儀に装着したまま、部屋の主こと皆本光一は眠っていた。
何も知らない人間が見たら倒れているんじゃないかと思うくらいの有様で、眠っていた。
実際賢木も部屋に一歩入ってその光景を見た瞬間だけは誤解した。
いつもなら規則正しい生活を心がけ眠いときはちゃんと寝室に向かう皆本が床で転寝。
連絡無しに遊びに来たら返り討ちよろしくのサプライズ演出で出迎えられた気分である。
実際は連絡無しではなく、携帯電話にメールで一報入れるだけは入れておいたが。
無自覚サプライズ演出の張本人は、恐らく賢木の来訪にすら気付かず眠っている。
転寝なので眠りが浅いのか幸せそうなにやけ顔で。
ふかふかの布団に暖かな日差しの下で眠るのはさぞかし幸せだろうから、賢木もそれには同感できる。
が、流石に目撃してしまった以上放置するのはまずい。
これが見ず知らずの普通の男ならそのまま放置してても別に良心がなんら咎めることは無いし、女性ならベッドに丁重に運んで一応紳士的に目覚めを待つところなのだが、相手は友人でしかも男。
ベッドに運んでやるのはどうかと思う。(重いし)
だが放置するのは申し訳ない。
シーツを持ってきて身体を冷やさないように掛けてやって、ケーキは冷蔵庫行き、書類にはメモを添えてテーブルの上、でも大丈夫だとは思うがそれは味気無いし、何より今は時間が余っている。
さてどうしようかと、賢木は小さく溜息をついて考えた。
鼻をくすぐるのが上等な豆で淹れるコーヒーの匂いだと気付いて皆本は目を開ける。
うっかり布団を干している最中に転寝をしてしまったのだと気付いたのが、其処から3秒後。
「ん・・・」
顔を上げると時間はまだ昼前と呼ぶには早い頃で、陽だまりと布団の誘惑に負けてからそんなに時間は経過していないようだった。
そういえば昼前までには賢木が尋ねてくると携帯のメールに連絡が入っていたはずだと思い出しながら、彼は同時に、自分で淹れた覚えの無いコーヒーの匂いが何処からしているのかを考えようとして、台所に立っている男の後姿を発見する。
「あれ、賢木」
声を掛けると、彼はくるりと振り返って笑う。
「よぅ、起きたか?」
その手にはコーヒーカップが二つ。
どうやらコーヒーを淹れていたのは賢木らしい。
「台所借りてるぜ」
シンクに置いたカップにコーヒーを注ぐ友人が余りにも自然に振舞っているので、皆本は一瞬何を言うべきか迷う。
チャイムぐらい鳴らせと言えばいいのか、起こしてくれれば良いのにと言えばいいのか。
考えあぐねていると、賢木に先を越された。
「起こそうかと思ったんだが、幸せそうな顔で寝てたんでな、やめといた」
「起こしてくれてもよかったんだぞ」
先手を打たれて悔しまぎれの反論しか出てこなかったが、それには更に、夜勤明けだろと言う言葉が返ってくる。
確かに夜勤明けで眠くて体力の限界だったのは事実なので、否定はしなかった。
「書類を預かってきてくれたんだろ?」
淹れてもらったコーヒーに礼を言ってカップを受け取ると、テーブルの隅、食器の邪魔にならない位置に置かれた封筒に目をやる。
バベルの外に持ち出し可能と言う事は、機密と言うわけでもない事務関連書類なのだろう。
「大した物じゃないぞ。チルドレンの実家に送ったPTA関連のコピー文だ」
「ああ、そうか。確か今年もそろそろ授業参観とか懇談会とか有る時期だもんな・・・」
封筒の中身に軽く目を通しながら頷く。
遠方に住んでいたり職業柄時間がとれなかったりと諸事情有って、チルドレンである三人の少女の家族は、そういう学校行事に参加するのが難しい。
卒業式にはなんとしてでも出席するとは言っていたが、授業参観や親同士の集いに参加するのは恐らく無理だろう。
「やっぱ授業参観は代わりに行くのか?」
「そうだね、行くつもりだよ」
「あれだよな、局長も行きたがりそうだな」
「それはなんとしてでも止めさせたいんだが」
眠気覚ましにコーヒーを飲みながら、友人との他愛無い話に相槌を打つ。
非番とは言え久し振りに穏やかな時間を過ごしていると、皆本は会話の中漠然と思った。
天気はいいし、家事は滞りなく片付いたし、事件の呼び出しも来ない。
チルドレンは今頃学校で勉強し、休み時間には級友とお喋りでもして過ごしている事だろう。
平和だった。
幾度と無く聞かされている【タイムリミット】が嘘のような平穏。
「ずっとこんな時間が続けば良い、か?」
ふと、賢木がたった今自分が考えたばかりの言葉を口にする。
「テーブル越しに思念が伝わるほど念じてたか?」
「ビンゴか。読めたっつーか、顔に書いてたんだけどな」
「なんて?」
「平和最高って」
その一言に、皆本は笑うしかなかった。
「俺も大賛成だよ」
そう、賢木が続けた言葉に、もう一度笑う。
この平穏こそが素晴らしいという思いに同意してくれる友人には、もう少ししてから昼食を振舞ってやることにしようと、考えながら。
他愛無い、何でも無い、普通の日の話。
終
++++++++++++++++++++++++++++++
≪言い訳≫
やまなし、おちなし、意味無し。
そんなワンシーンを切り取るだけの小ネタを書こうと思ってやらかしました。
あと、コーヒー美味いよね。
2009年5月10日・辻斬りマリィ
追伸。
5/9に拍手くださった方へ。
ありがとうございます。現在、絶対可憐チルドレンの二次創作が一番更新遅れている(上に家主が絶チルを相方にほぼ任せてる)状態ですが、よろしければまた覗いてやってくださいませ。
当ブログの白石稔担当(自称)辻斬りです。
や、絶チルも書きますんで・・・あの本当に勘弁してください。
と言うわけで久々に絶チルです。
好きなように書いたらわけのわからないほのぼのが生まれました。
皆本+賢木でほのぼのしてます。
続きに押し込めてありますのでどうぞ。
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SUNNY
賢木修二は少しだけ困っていた。
「・・・あー」
手には学校から帰ってくるであろう三人娘への手土産と思って買って来たケーキ。
(以前ロールケーキに渋っていたと聞いたのでクリームとフルーツで豪勢に飾った物を選んで)
もう一方の手には、本日非番であるはずのこの部屋の主に渡してくれと、上から直々に頼まれたいくつかの資料が入るケース。
そして目の前には、日当たりの良い部屋にて布団を床に広げ、その上で力尽きたらしい部屋の主。
状況は自分の能力で読み取らなくても簡単に理解できた。
恐らく、今足元で幸せそうに眠っている男は、久し振りの非番で部屋中を徹底的に掃除しついでに天気がよかったので布団干しも決行、最後に洗濯物に幅を取られベランダに干せなかった布団をこの日当たりの良い床に敷いて日光だけでも当てようと考えそれを実行したところで疲労がピークに達し、柔らかく温かい布団にダイブする誘惑に勝てず現状に至るのだろう。
エプロンをつけたまま眼鏡もかけたまま、それどころか足にはスリッパまで律儀に装着したまま、部屋の主こと皆本光一は眠っていた。
何も知らない人間が見たら倒れているんじゃないかと思うくらいの有様で、眠っていた。
実際賢木も部屋に一歩入ってその光景を見た瞬間だけは誤解した。
いつもなら規則正しい生活を心がけ眠いときはちゃんと寝室に向かう皆本が床で転寝。
連絡無しに遊びに来たら返り討ちよろしくのサプライズ演出で出迎えられた気分である。
実際は連絡無しではなく、携帯電話にメールで一報入れるだけは入れておいたが。
無自覚サプライズ演出の張本人は、恐らく賢木の来訪にすら気付かず眠っている。
転寝なので眠りが浅いのか幸せそうなにやけ顔で。
ふかふかの布団に暖かな日差しの下で眠るのはさぞかし幸せだろうから、賢木もそれには同感できる。
が、流石に目撃してしまった以上放置するのはまずい。
これが見ず知らずの普通の男ならそのまま放置してても別に良心がなんら咎めることは無いし、女性ならベッドに丁重に運んで一応紳士的に目覚めを待つところなのだが、相手は友人でしかも男。
ベッドに運んでやるのはどうかと思う。(重いし)
だが放置するのは申し訳ない。
シーツを持ってきて身体を冷やさないように掛けてやって、ケーキは冷蔵庫行き、書類にはメモを添えてテーブルの上、でも大丈夫だとは思うがそれは味気無いし、何より今は時間が余っている。
さてどうしようかと、賢木は小さく溜息をついて考えた。
鼻をくすぐるのが上等な豆で淹れるコーヒーの匂いだと気付いて皆本は目を開ける。
うっかり布団を干している最中に転寝をしてしまったのだと気付いたのが、其処から3秒後。
「ん・・・」
顔を上げると時間はまだ昼前と呼ぶには早い頃で、陽だまりと布団の誘惑に負けてからそんなに時間は経過していないようだった。
そういえば昼前までには賢木が尋ねてくると携帯のメールに連絡が入っていたはずだと思い出しながら、彼は同時に、自分で淹れた覚えの無いコーヒーの匂いが何処からしているのかを考えようとして、台所に立っている男の後姿を発見する。
「あれ、賢木」
声を掛けると、彼はくるりと振り返って笑う。
「よぅ、起きたか?」
その手にはコーヒーカップが二つ。
どうやらコーヒーを淹れていたのは賢木らしい。
「台所借りてるぜ」
シンクに置いたカップにコーヒーを注ぐ友人が余りにも自然に振舞っているので、皆本は一瞬何を言うべきか迷う。
チャイムぐらい鳴らせと言えばいいのか、起こしてくれれば良いのにと言えばいいのか。
考えあぐねていると、賢木に先を越された。
「起こそうかと思ったんだが、幸せそうな顔で寝てたんでな、やめといた」
「起こしてくれてもよかったんだぞ」
先手を打たれて悔しまぎれの反論しか出てこなかったが、それには更に、夜勤明けだろと言う言葉が返ってくる。
確かに夜勤明けで眠くて体力の限界だったのは事実なので、否定はしなかった。
「書類を預かってきてくれたんだろ?」
淹れてもらったコーヒーに礼を言ってカップを受け取ると、テーブルの隅、食器の邪魔にならない位置に置かれた封筒に目をやる。
バベルの外に持ち出し可能と言う事は、機密と言うわけでもない事務関連書類なのだろう。
「大した物じゃないぞ。チルドレンの実家に送ったPTA関連のコピー文だ」
「ああ、そうか。確か今年もそろそろ授業参観とか懇談会とか有る時期だもんな・・・」
封筒の中身に軽く目を通しながら頷く。
遠方に住んでいたり職業柄時間がとれなかったりと諸事情有って、チルドレンである三人の少女の家族は、そういう学校行事に参加するのが難しい。
卒業式にはなんとしてでも出席するとは言っていたが、授業参観や親同士の集いに参加するのは恐らく無理だろう。
「やっぱ授業参観は代わりに行くのか?」
「そうだね、行くつもりだよ」
「あれだよな、局長も行きたがりそうだな」
「それはなんとしてでも止めさせたいんだが」
眠気覚ましにコーヒーを飲みながら、友人との他愛無い話に相槌を打つ。
非番とは言え久し振りに穏やかな時間を過ごしていると、皆本は会話の中漠然と思った。
天気はいいし、家事は滞りなく片付いたし、事件の呼び出しも来ない。
チルドレンは今頃学校で勉強し、休み時間には級友とお喋りでもして過ごしている事だろう。
平和だった。
幾度と無く聞かされている【タイムリミット】が嘘のような平穏。
「ずっとこんな時間が続けば良い、か?」
ふと、賢木がたった今自分が考えたばかりの言葉を口にする。
「テーブル越しに思念が伝わるほど念じてたか?」
「ビンゴか。読めたっつーか、顔に書いてたんだけどな」
「なんて?」
「平和最高って」
その一言に、皆本は笑うしかなかった。
「俺も大賛成だよ」
そう、賢木が続けた言葉に、もう一度笑う。
この平穏こそが素晴らしいという思いに同意してくれる友人には、もう少ししてから昼食を振舞ってやることにしようと、考えながら。
他愛無い、何でも無い、普通の日の話。
終
++++++++++++++++++++++++++++++
≪言い訳≫
やまなし、おちなし、意味無し。
そんなワンシーンを切り取るだけの小ネタを書こうと思ってやらかしました。
あと、コーヒー美味いよね。
2009年5月10日・辻斬りマリィ
追伸。
5/9に拍手くださった方へ。
ありがとうございます。現在、絶対可憐チルドレンの二次創作が一番更新遅れている(上に家主が絶チルを相方にほぼ任せてる)状態ですが、よろしければまた覗いてやってくださいませ。
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